嘘つきなポーカー 1【完】



由佳はしばらくその場に立ち尽くしていた。

状況が全く飲み込めなかった。

何故恭平がここに居るのだろう?
それに、薫が言っていた「木村」とは、華代のことだろうか?

もしかして、華代の言っていた先輩は、恭平だったのだろうか ――?

話がどうも繋がらず、由佳の頭の中は混乱していた。


「悪かったな、邪魔して。」


薫が口を開いた。

薫は由佳のほうにゆっくり歩いてくると、黙って立ち尽くす由佳の目の前で立ち止まって由佳を見下ろした。

その表情はどこか不機嫌で、そして何故か少し息を切らしている。


「あいつがお前の好きだった男、ね。」

「……。」

「お前案外趣味悪いのな。」

「…違う。」

「あいつ、木村が言ってた男じゃん?」

「……。」

「木村を散々否定しといて、自分はそいつが好きなの?」

「…好きじゃない。」

「お前って、好きじゃない奴とキスとか出来ちゃうの?そういう人って最低じゃなかったの?」

「……。」


由佳は唇を噛んだ。