由佳はしばらくその場に立ち尽くしていた。
状況が全く飲み込めなかった。
何故恭平がここに居るのだろう?
それに、薫が言っていた「木村」とは、華代のことだろうか?
もしかして、華代の言っていた先輩は、恭平だったのだろうか ――?
話がどうも繋がらず、由佳の頭の中は混乱していた。
「悪かったな、邪魔して。」
薫が口を開いた。
薫は由佳のほうにゆっくり歩いてくると、黙って立ち尽くす由佳の目の前で立ち止まって由佳を見下ろした。
その表情はどこか不機嫌で、そして何故か少し息を切らしている。
「あいつがお前の好きだった男、ね。」
「……。」
「お前案外趣味悪いのな。」
「…違う。」
「あいつ、木村が言ってた男じゃん?」
「……。」
「木村を散々否定しといて、自分はそいつが好きなの?」
「…好きじゃない。」
「お前って、好きじゃない奴とキスとか出来ちゃうの?そういう人って最低じゃなかったの?」
「……。」
由佳は唇を噛んだ。

