嘘つきなポーカー 1【完】



「お取り込み中わりーけど。」


恭平の唇が由佳の唇に触れそうになった時、教室の入り口の方から聞き慣れた声が聞こえた。


恭平はチッと舌打ちをして、声の主のほうを見る。


「何?」

「木村がお前のこと探してたぞ。」

「木村?あぁ、あの子ね。」

「だから離れろ。」

「あ?」

「そいつから離れろよ。泣いてるだろ。」


薫の声はいつもよりずっと低く、敵を目の前にして唸る獅子のようだった。


「ごめんね、由佳。びっくりさせちゃったね。ほんの冗談だよ。」


恭平は笑いながらそう言って、涙を流す由佳の頭を優しく撫でた。


「続きはまた今度。」


ニヤリとそう言い残して、恭平は教室を去っていく。

去り際、恭平は薫に呟いた。


「君はずるい男だな。」


薫は黙ったまま恭平を睨み付けていた。