嘘つきなポーカー 1【完】


その瞬間、最後に会った時の恭平の姿がふと由佳の頭によぎる。


「今更…何しに来たの…。」

「まぁまぁ、そんな怒らないでよ。ところでその右足の怪我はどうしたの?」

「恭ちゃ…先輩には関係ないでしょ。」


由佳は恭平を睨み付けながら言った。
すると恭平は笑う。


「随分と冷たくなったんだね。」


恭平はそう言って、由佳のもとに歩いてくる。


「関わらないでって言ったのはどっち?」

「忘れたよ、そんな昔の話。」

「……っ!」

「由佳って、甘えん坊だったよね。」

「……。」


「僕にだけ見せてくれたありのままの由佳を、僕は忘れないよ。」


恭平はそう言って由佳の目の前まで来ると、由佳の顎をくいと持ち上げ、顔を近付けた。
由佳は恭平を睨み付ける。


「由佳は僕のことが好きだったよね?」

「なっ…」

「じゃあキスしよっか。」

「……っ!」


由佳は取り乱した。

あまりに近くに接近してきた恭平の綺麗な顔に、拒否しようとしても金縛りにあったように身動きが取れなかった。


由佳はぎゅっと目を閉じた。


かつての優しかった恭平の姿がふとまぶたの裏に映し出された。


―― 恭ちゃん、私たちずっと一緒?

―― うん。僕が一生、由佳を守るよ。



一筋の涙が由佳の頬を伝った。