その瞬間、最後に会った時の恭平の姿がふと由佳の頭によぎる。
「今更…何しに来たの…。」
「まぁまぁ、そんな怒らないでよ。ところでその右足の怪我はどうしたの?」
「恭ちゃ…先輩には関係ないでしょ。」
由佳は恭平を睨み付けながら言った。
すると恭平は笑う。
「随分と冷たくなったんだね。」
恭平はそう言って、由佳のもとに歩いてくる。
「関わらないでって言ったのはどっち?」
「忘れたよ、そんな昔の話。」
「……っ!」
「由佳って、甘えん坊だったよね。」
「……。」
「僕にだけ見せてくれたありのままの由佳を、僕は忘れないよ。」
恭平はそう言って由佳の目の前まで来ると、由佳の顎をくいと持ち上げ、顔を近付けた。
由佳は恭平を睨み付ける。
「由佳は僕のことが好きだったよね?」
「なっ…」
「じゃあキスしよっか。」
「……っ!」
由佳は取り乱した。
あまりに近くに接近してきた恭平の綺麗な顔に、拒否しようとしても金縛りにあったように身動きが取れなかった。
由佳はぎゅっと目を閉じた。
かつての優しかった恭平の姿がふとまぶたの裏に映し出された。
―― 恭ちゃん、私たちずっと一緒?
―― うん。僕が一生、由佳を守るよ。
一筋の涙が由佳の頬を伝った。

