「あほらし。」
由佳がそう呟いて、自分の教室に足を踏み入れた時だった。
由佳の目に飛び込んできたのは、見覚えのない金髪の男。
「ま、間違えました。」
由佳はそう言って、松葉杖を巧みに使いながら後ずさりをして教室の外に出た。
きっと今の人は、関わってはいけないタイプの人だ。
一瞬のことだったので顔はよく見えなかったが、陽の光で反射するド派手な金髪と、キラリと光るいくつものピアスが見えた気がした。
由佳がその場を去ろうとした時だった。
「間違えてないよ。」
教室から聞こえるその声に、由佳は足を止めた。
心臓がざわつくのが分かった。
どこか懐かしく、そしてどこか優しく、そしてどこか胸が締め付けられるような声だった。

