「あの…小野寺くん。私…」
その時、薫の近くに居た女子たちの会話が耳に入る。
「ねぇ、細谷先輩居なくない?あの金髪目立つからすぐ分かりそうなのに。」
「なんかさっきまで居たけど、1年の女の子探してたみたいだよ。ここに居なかったから探しに行ったみたい。」
「え?マジ?細谷先輩その人に告白するのかな?ショックすぎー!」
「いやー、あの人に限ってそれはないっしょ。1人の女に尽くすなんて無理そうじゃん?」
「言えてる。」
薫の嫌な予感はよく当たる。
大体、このイベントに参加していない1年の女子なんて、由佳ぐらいしか居ないに決まっている。
「ちょっと悪い!」
薫は目の前で恥ずかしそうにする女子の話を遮って体育館を飛び出した。
気付けば足が動いていた。
会わせちゃマズい――…。
何となく薫はそう思った。

