嘘つきなポーカー 1【完】



帰り道、薫が口を開いた。


「時間あるし、どっか寄ってこーぜ。」

「何言ってんの。こんな足でどこも行けるわけないでしょ。」

「あ、そう言えば今ミス・ドーナッツが100円セールしてるってCMしてたな。俺が奢ってやってもいいけどなー。」

「行く。行きます。」


由佳が即答すると、薫は「単純な奴。」と面白そうに笑った。


そう言えば薫と2人でどこかに行くのは初めてかもしれない。

何度か一緒に帰ったりはしていたが、いつも寄り道をせず家まで一直線で帰る由佳の隣をただ付いてくるだけだった。

というか、由佳は男の人と2人きりでどこかに行くこと自体初めてだった。

これか俗にいうデートというものなのだろうか。


そうだとしたら、初めてのデートの相手が薫であることは、他の女子たちから見ればひどく羨ましいことなのかもしれない。

由佳はそんなことを考えた。