「守ったんでしょう?遠藤さんのこと。」
華代は呟いた。
「あの時…小野寺くんが遠藤さんに殴りかかろうとした時、小野寺くんを止めたのは、小野寺くんのためだけじゃない。遠藤さんのためでもあったんでしょう?」
「いや、そんなつもり…」
「先生に口止めしたのも、遠藤さんのため?」
「いや…それは面倒くさいことを避けるためで……」
「どうしてそんなに優しい嘘つきになれるんですか?どうして自分の身を犠牲にして他人を守るんですか?ましてや自分のことを傷付ける相手なのに。」
華代は続けた。
「笠原さんがこんなにいじめられるようになったのも、元はと言えば私のせいです。」
華代は悲しそうな顔をした。
「笠原さんは無自覚なのかもしれません。だけど、私はあなたに救われました。」
そして華代は話し始めた。
それは高校に入学してまだ間もない、5月頃の話だった――…。

