保健室には、由佳と華代の2人だけになった。
暫く沈黙が続いた。
沈黙を打ち破ったのは、華代だった。
「あの…どうして私のこと怒らないんですか?」
ばつが悪そうに由佳にそう尋ねる華代に、由佳は首をかしげて言った。
「怒るって、どうして?木村さんは私を助けてくれたのに。」
「でも…っ、山に登った時、私はあなたを騙しました…」
申し訳なさそうにそう言って俯く華代に、由佳は笑いながら言った。
「あぁ、そんなこともあったね。もう色々ありすぎて忘れちゃってた。」
「そんな…っ、でも私のせいで笠原さんはこんなに大怪我をしてしまって…」
「でも、私にも怒る資格なんてないし。だってもし私が木村さんと同じ状況に置かれたら、きっと私も自分を守ってしまうと思うよ。」
由佳のその言葉に、華代は拳を握りしめながら叫んだ。
「そんなの嘘です!」
由佳は驚いて華代をじっと見つめた。

