由佳と華代が保健室に着くと、何やら騒がしい声が聞こえてきた。
その声の主の1人は薫だと、由佳は声を聞いてすぐに分かった。
そしてもう1人は――…。
「お前は本当に可愛くない奴だな!」
そう言って薫の頭をくしゃくしゃと撫でるのは、校医の松本先生だ。
松本先生は学校の女子から絶大な人気を誇っていた。
その甘いマスクは、薫とはまた違った大人の色気がある。
女子が黙っていないのも頷ける。
そんな松本先生と薫が、保健室で言い争いを繰り広げている。
「そもそも、いじめられてる子が居るのに黙ってろなんて…薫!そんなことが許されると思うのか?」
「だからそいつが黙ってろって言うんだから黙っててやれよ。面倒くせぇ奴だな…」
言い争う2人の会話に割って入るように華代が声をかける。
「あのー…」
すると、2人はやっと由佳たちの存在に気付いた。
「あぁ、君か!ひどい怪我だな。可哀相に、こんなになるまでいじめられて…」
松本先生は由佳を見て、哀れみの表情を見せた。

