「でも、無事で良かった…」 薫は胸がざわつくのが分かった。 この感情を言葉に例えろと言われても、薫は例えることができないと思った。 嬉しいような照れ臭いような、だけど悲しくて虚しいような、複雑な気持ちだった。 「笠原さ…」 薫がそう言って由佳のほうを見ると、由佳は目を閉じて寝息を立てていた。 「おい、寝てんのかよ。」 由佳から返事は返ってこない。 「無防備すぎだろ。」 薫は大きくため息をついて、呟いた。