いつものバー。扉を開けると、いつもの常連とマスターの良樹さんが。

「いらっしゃい。お疲れ」

カウンター席に座ると、素早く注文した

「良樹さーんビール。」

「あれ?真理はご機嫌ななめ?」

「そうなの、何かわからないんだけど・・・」

「私も同で」

「加奈子新しいワイン入ったけど?」

「じゃそれ!あと何か食べるもの。おなか空いちゃった」

「了解。」

乾杯の後、加奈子に言った。

「私って、仮面かぶってる??」

ぶーっとワインを吹きだした。

「なにそれ?見破ったやつがいたの!!」

「見破ったって・・・」

「見られたの・・・」

「誰かに」

「休憩室で・・・でも暗くて顔がわからなかった。」

「だから、機嫌悪いの?」

「何か腹が立って。私の何がわかるのって言いたかった。」

(というか、恥ずかしかった・・・)

「あんたがかぶっているのは、昔あのことがあるからでしょ」

「・・・・・」

「もういいじゃん。いいかげん。元の真理に戻りなよ」

「できないよ・・・」

「もうあの人はいないんだから・・・」

「わかってる・・・だけど・・・」

「まぁあんたの性格変えるぐらいのやつが現れないと無理か。」

「だーね。そんなやついないわよ。」

「わかんないよ~。周りをみてごらん。いない?」

「う~ん。いない」

「はっきりいうねぇ~。僕はだめ?」

「良樹さんは私の相談相手。それに加奈子の婚約者でしょ」

「そうだね~。いつでも僕はOKですよ。」

「もう、良樹さん!何てこというの」

「ごめん、冗談。僕は加奈子だけだよ」

「もう~ばか。」

(私もこんな人が現れるのかな・・・)

一気にビールを飲み干した。

「良樹さ~んおかわり」

グラスに入ったビールグラスの水滴をなぞりながら、

私だって、あんなことさえなかったら・・・はぁ~。

たばこを一服、ビールを飲む。

(これじゃますます無理だわ・・・)