東さんの言う通り
その美容室はほんの2、3分で到着した。
もう閉店したのか、片付けに追われる店員さんが慌ただしく店内を駆け巡る。
そんな店の様子を気に止めずに、東さんは扉を開けた。
あたしもその後をついて行く。
「僕はその辺で時間潰してるんで、終わったらお食事に行きましょう。」
「はい!」
東さんの言葉はまるで魔法のようだ。
こんなにも、あたしを幸せにしてくれる。
髪を切って、東さんと食事。
そう考えただけで、顔がだらしなく緩んでいくのがわかった。
「じゃあ、涼子。頼むな!終わったら連絡して。」
涼子、と呼ばれた東さんのいとこは
「はーい。」と顔だけを彼に向けて返事をする。
「それじゃ、楽しみにしてますから。」
「はい。」
短く言葉を交わして
東さんは再び外へと出て行った。

