君と歩く未知

 ホテルに着くと、フロントで鍵を受け取り、アタシたちは美和ちゃんと直紀くんに手を振った。
綺麗に磨かれた廊下を歩きながら、天井にぶら下がるシャンデリアや真っ白な壁紙をぼんやり見ていたアタシはふと思った。
いかにも高級感溢れるホテルで、アタシはホテルの値段が予想以上に高いのではないかと心配になったのだ。
だけど、カズくんはこの間、
「ホテルの料金はオレが払う」
って言ってきかなかったっけ。
アタシはカズくんに聞いてみた。
「ねぇ、ホテルの料金、やっぱアタシ払うよ」
アタシは元チャット嬢だ、そんなに貧乏じゃない。
あのお金を使えば良い。
「ダメ、オレが払うって言ったろ?」
カズくんはアタシの手を引きながら、部屋を探している。
「えー、じゃあ割り勘っ!」
カズくんは笑った。
「弥生ってなんでそんなにオレに気ぃ遣うわけ?心配しなくてよろしい。このホテル、ホントにそんなに高くないんだから。素直に『ありがとう』って言いなさい」
アタシはカズくんの話し方が面白くて笑った。
「じゃぁ、今日は甘えさせてもらいます。どうもありがとねっ!そのかわり、今度ご飯おごらせてねっ!」
アタシは素直に言って、カズくんを見上げた。
カズくんはアタシを見てニッコリ笑った。
「それでよろしい。…ご飯、期待してます」
アタシがケラケラ笑うとカズくんの足が止まった。
あれ…?
「部屋、ここかな?」
カズくんは今日泊まる部屋を見つけたみたいで番号を確認していた。
「うん、やっぱここだ」
そう言って鍵をカズくんは差し込んだ。
 なんだか、ドキドキしてしまう…
そばにいるカズくんに胸の音が聞こえちゃいそうだよ…
ドアが開き、カズくんが電気を付けると、とても綺麗で真っ白な部屋がアタシたちを待っていた。