君と歩く未知

　アタシは予想外の展開にびっくりして、しばらくボーっとしていた。
「ねぇ、お母さん、アタシ行ってもいいの？」
アタシはお母さんに尋ねた。
お母さんは不思議そうに答えた。
「良いって言ってるじゃない。自分が行きたいって言ったのにおかしな子ねぇ」
アタシはお母さんに飛びついた。
思いっきり、お母さんが洗濯物の中に飛び込んでしまうくらいの勢いで。
「ありがとっ！」
お母さんとアタシはよろめきながら笑った。
お母さんは言った。
「お母さんもわかってるんだけどね。恋愛真っ只中のカップルに何を言ってもムダだってことくらい」
アタシはお母さんに尋ねた。
「お母さんと…お父さんもそうだったの？」
アタシは少し「お父さん」という単語を口にするのをためらった。
でも、聞いておきたかった。
「うーん…まぁそうだったんじゃないかな。自分たちのことはよく覚えてないや。…でもお互いに愛し合っていたと思うよ」
お母さんは懐かしそうに言った。
アタシはそんなお母さんを見ていて自然と口が開いた。
「それで…結婚した」
お母さんは寂しそうに小さく頷いた。
アタシはなんだかたまらなくなった。
当たり前のことだけど、お母さんは…ずっとお父さんを愛していたんだ。
だから、あんなにお酒を飲んで荒れてしまっていたお父さんを支え続けたんだ。
あんなお父さん捨ててしまっても良いと思っていたのはアタシだけだったんだな。
…そう思うと急に胸がキュンと切なく、小さくなった気がした。