君と歩く未知

　そのとき、音がした。
大きくて、鋭くて、アタシの鼓膜を貫くような、イヤな音。
驚いてさっきまでお父さんとお母さんが言い争っていた場所の方へ振り向くと、信じられない光景が広がっていた。
…倒れて動かないお母さん、それを呆然と見つめて立ち尽くしているお父さん、その周囲には割れた白いお皿の破片。アタシは慌てて駆け寄った。
「お母さん！おかぁさぁん！！」
お母さんの体を揺さぶると頭から赤い血が流れているのに気が付いた。
…アタシは思った。棚の上に飾ってあった花柄の白いお皿で、お父さんがお母さんを殴ったんだ…。
アタシは救急車を急いで呼んだ。
泣き叫びながら、一生懸命お母さんの状態を隊員に説明した。
アタシもお父さんに殺されてしまうのではないかと怖かった、お母さんともう一生会えなくなるのではないかと不安で体の震えが止まらなかった。
…だけど、アタシの後ろで立ち尽くしているお父さんの方がもっと激しく震えていた。…アタシはお父さんの方に振り向いて静かに尋ねた。