君と歩く未知

　アタシは意を決して、一つ深呼吸をした。
「あのね…お母さん…アタシ妊娠しちゃったの…」
お母さんは内心驚いているんだろうけど、あえてそれを表情に出さなかった。
アタシは続けた。
「昨日、体調がおかしいなって思ってね、妊娠検査薬使ったの。そしたら妊娠してて…」
お母さんはアタシの肩を抱いて言った。
「仕方ないじゃない…レイプの時に…」
アタシはそのお母さんの言葉をさえぎって言った。
「…そうなの！そうだったの！この子は、レイプの時にできちゃった子なの…でもねアタシ、今から一週間前…カズくんとＨしちゃって…レイプから二週間も経ってからＨしたから、きっとカズくんの子だって思い込んじゃって…カズくんに話しちゃった…」
お母さんの目から光が消えた。
アタシの目からはまた涙が流れ落ちてきた。
「…それで今日、美和ちゃんと病院に行ってちゃんと先生に聞いたら、Ｈしてから一週間じゃ子どもはできないって言われちゃった…」
お母さんは肩を震わせながらアタシに言い放った。
「もう一回言ってみなさい…」
アタシは涙を流しながら、開き直ってお母さんに強く言った。
「…カズくんとＨしちゃったんだよ！それで、カズくんの子だって勘違いしてカズくんに話しちゃったの！アタシ…バカみたいだよね…」
パチン…
お母さんはアタシの頬を叩いた。
アタシの頬はズキズキと痛む…
この痛みはお母さんの心の痛みだね…
「なんてことを…そんなことを開き直って言っちゃだめ！…和哉くんにはこのことちゃんと伝えたの？」
アタシは叩かれた頬を手で抑えながら首を横に振った。
「弥生は…産みたいの？堕したいの？」
アタシは涙でいっぱいになった目で真剣にお母さんに言った。
「アタシは…たとえカズくんの子じゃなくても、赤ちゃんを愛してる。だけど…もしアタシが産んでしまったら…カズくんの子ではないって言ったって、カズくんはきっと傷付いてしまうと思うの…だからこの子は…堕したい…」