君と歩く未知

 アタシはその日、眠れない夜を過ごした。
美和ちゃんに電話しようかと思ったりもしたけど、夜遅いからやめた。
こんなに眠れないのは、人生で初めてかも知れない。
結局、一睡も出来ないままアタシは朝を迎えた。
家にいても退屈だし、アタシはまだ寝ているお母さんに置手紙を書いて、いつもよりずいぶん早い五時に家を出た。
今日はつわりもほどくないし、近くのコンビニで朝ご飯を買って歩き出した。
 朝がやってきたばかり、この街も目覚め始める…
この街の呼吸が聞こえるようで、アタシは耳をすませた。
「ねぇ、赤ちゃん、ここがあなたの街だよ。今度、お父さんの街にも行こうね」
アタシはまだ人通りのない道で赤ちゃんに話しかけた。
自然とお腹に手を当てる…
カズくんはちゃんと眠れたかな。
良い答えがもらえると良いな…
「産んで良いよ」って言って欲しいな…
イヤ、たとえ悪い答えであったとしても、アタシは中絶なんてしないよ。
カズくんとアタシの子だもん、絶対に産んで育てたいよ。
「絶対に産んであげるからね」
アタシはそう言ってお腹を撫でた。