君と歩く未知

　カズくんは困ったようにうつむいたまま…
そりゃそうだよね。
いきなりこんなこと告白されて、カズくんの子なんだよって言われたって理解できないよね。
いつも困らせてばっかり、ごめんね。
でも、今回はアタシ一人の力じゃどうしようもないの。
二人の子だもん。
二人でちゃんと話し合って決めたい。
　カズくんが黙り込んでしまってから十分ほど経って、アタシは重苦しい空気に耐え切られなくなって口を開いた。
「…ごめんね、いきなりこんなこと言われても困るよね」
カズくんは首を横に振った。
「イヤ、オレの子でもあるんだし。…なんか、ごめんな。弥生の方が負担が大きいのに、オレこんな弱くて…」
そう言ったカズくんはいつもより小さく見えた。
将来に対する不安からか、カズくんの体が震えているような気がした。
ほんの少しだけ寂しいような複雑な気分になって、アタシはカズくんを見つめた。
「…ごめん、オレ今日帰るわ」
そう言ってカズくんは立ち上がった。
アタシは歩き出したカズくんの後をついて玄関まで見送った。
「…弥生、今日一日考えさせてくれ。ごめんな、頼りないヤツで」
アタシは黙って首を横に振った。
「だけどオレ、弥生もお腹の赤ちゃんも大切に思ってるから」
そう言ってカズくんはニッコリアタシに笑いかけてくれた。
アタシもニッコリ笑ってカズくんに手を振った。
　カズくんはこんな時でさえアタシを笑顔にしてくれる。
魔法使いみたいだね。
アタシはお腹の赤ちゃんに話しかけた。
「あなたのお父さんは優しいのよ」
言葉の意味はわからないかも知れないけど、この思いが届いて欲しい。
アタシはそう思いながら自分の部屋へ戻って言った。