君と歩く未知

 「なんだ、そんなことか。伝えておくよ。…絶対に和哉とヨリ戻せよ!!」
そうあっさりと竜平くんは言って、アタシに手を振った。
アタシはこんな風にあっさりと承諾してくれる竜平くんの姿をぼんやりと見送っていると、お礼を言っていないことに気が付き慌てて叫んだ。
「竜平くーん!ありがとーっ!」
周りの人が驚いた顔でアタシの顔を見ていた。
竜平くんは片手を挙げて、アタシの声に答えた。
ありがとう、本当にありがとうね、竜平くん!
アタシ、きっとまたカズくんと仲良くしてみせるよ。
アタシの弱気な心に、一つの光が差した瞬間だった。
 それからアタシはこの二週間休んだことなんか気にしていない素振りで、授業に臨んだ。
確かに二週間休んでしまうと、もう授業の意味はわからない。
でも、放課後にはカズくんに会えると思うと嬉しくて嬉しくて仕方なかった。
だから、せっせとノートを書き、放課後のリハーサルを頭の中でしていた。
もしかしたら、これでお別れになるかも知れないというのに、どうしてこんなに幸せな気分になれるんだろう…?
 そして、終礼のチャイムが校内に鳴り響く。
鳴ったと同時にアタシは教室を飛び出て、急いで職員室に美術室の鍵を借りに行く。
あれ…?
美術室の鍵、貸し出し中になってる…
先輩かな、鍵を返し忘れちゃったのかな…
アタシはそんな風に思いを巡らせながら、美術室まで走った。