その絵には文化祭で見たような、詩の付いた絵だった。
ドアを開けて立ち去ろうとしている、羽の生えた少女…
その向こうには青空が描かれている…
アタシは直感的に思った。
この絵に描かれている少女はアタシなんだって。
アタシは詩に目を落とした。
――君がいた日を、僕は忘れない――
――君がいて、僕がいた――
――当たり前みたいだけど、当たり前じゃなかった――
――そんな単純なことに――
――僕は気が付けなかった――
――だから、きっと――
――君がこの詩を読んだ日に――
――君は歩み始めるでしょう――
――僕がいない未知を――
 読み終わると涙が溢れていた。
絶望の中でぼんやりと考えたんだ。
これはカズくんからのお別れの詩なんだって。
「僕がいない未知」=「カズくんがいない道」
小さな謎解きを終えた後、どうしようもない悲しみに襲われてアタシは泣きじゃくった。
イヤだ、イヤだ、絶対にイヤだ…
あの日…カズくんが心配して家まで来てくれた日に、アタシがカズくんを拒んだりしたから…
いいや、もっと前、あの日…レイプになんて合ってしまった…それで男という存在が怖くなってしまったから…
 もう、自分でも何が言いたいのかわからない。
口では言い表せないよ。
ただ、どうしようもない悔しさと情けなさが胸いっぱいに込み上げて来て、涙として目から溢れ出て来る…
アタシはこれから本当にカズくんのいない「道」を歩いて行けるの?
無理だよ…