私たちは最悪な別れ方をしたけど、でもそれまでは悠ちゃんのことは何でもわかっているつもりだった。
芸能人…俳優になりたいなんて聞いたことがなかった。
何回かスカウトされているのを見たことがあるけど、断っていたし…
だから、二年前に本屋さんで悠ちゃんのポスターを見てびっくりした。
「美遥、サイン貰いに行こう!」
「…え?」
いつの間にか悠ちゃんの撮影は終わっていて、今は悠ちゃんの周りにはファンが集まっていて、色紙にサインを求めていた。
「ああ…」
あんな近くにいったら、悠ちゃんにばれてしまう。
もうこれ以上嫌われるのは、嫌。
「ごめん、有沙。私ちょっとトイレに行きたいから、恭子と行ってきて」
ごめんと両手を合わせて、私は逃げるように公園に設置されているトイレに向かった。


