それから有沙や恭子と話して、気づけば二時間経っていた。
携帯の時間で確認したと同時にきゃーとファンの悲鳴が聞こえた。
…っ、悠ちゃんだ。
数日ぶりに姿を見た悠ちゃん。
仕事のせいか、この前とオーラが違うように感じる。
やっぱり、悠ちゃんは芸能人なんだ。
「きゃー!悠斗ー!!」
「こっち向いてー!」
ファンがキャーキャーと言っていると、有沙も負けないように悠斗ーと大きな声で叫んでいた。
「うるさい…帰りたい…」
恭子はうんざりとし、耳に手を当てて音を遮断している。
うん、恭子。
わかるよ、その気持ち。
「ほら、美遥も叫んで」
「…はい!?」
「もしかしたら、こっちに振り向くかもしれないじゃん」
いやいや、こんな大勢の中だよ?
周りの人の声に消されるだけじゃん。
悠ちゃんに私の声が届くはずがない。


