ーーー土曜日。
撮影は昼の三時からということで、有沙の提案により一時に集合しようとなったんだけど…
撮影場所では警備員さんが何人かいて、その近くでは榊原悠斗を見にきたファンで埋め尽くされていた。
すごい…
だって、まだ二時間ぐらいあるのに、もうこんな沢山のファンがいるなんて…
「甘く見てたぁ!!」
有沙はそう叫び、恭子ははぁとため息を吐いた。
恭子はもはや帰たそうな顔をしていた。
「…もう仕方がないよ。この辺にしようよ」
「ああ…目の前で榊原悠斗を拝みたかった…」
有沙はすごく落ち込んでいたけど、私にとっては好都合だった。
ごめんね、有沙。
もし悠ちゃんに見られたら、余計に冷たくされそうで…
悠ちゃんに拒絶されそうで、怖いんだ。
だから、私にとってはこの距離でちょうどいい。
悠ちゃんだって、私のこと見つけきれないと思うから。


