「榊原さんって今日…、このマンションから…出て行った…んですか?」




信じたくない…
悠ちゃんがいなくなったなんて、信じたくないのに…





「ああ、そうだよ。家の都合って言っていたな」




そういえばあの人どっかで見たことあるような…と管理人は呟いていたが、私の耳には入らなかった。





悠ちゃんが…いない…




五年前と同じ。


あの時私は、悠ちゃんに振られて会いたくなくて、悠ちゃんには何も言わずこっちに引っ越してきた。




…だけど、五年経った今は私と同じように別れを告げず、悠ちゃんは私の前から姿を消した。