ますます意味がわからない。
「だけど、柿谷さん遊びまくってたじゃないですか」
「だって、妬いて欲しかったから。それに――」
少し熱っぽい目で、私を見て。
そんなことされたら私が固まるのがわかっている彼はゆっくりと、近づいてくる。
「そうじゃないと、さえちゃんの目に俺は同期にしかうつらないと思ったから」
キシッと。古い椅子が音を立てる。
座ったままの私と、それに覆い被さる形で顔を寄せる柿谷さん。
「さえちゃんの前では、俺はたださえちゃんが好きなだけの男なのに」
脅してでもそばにいたかったのだ言う。
その少し不機嫌そうな、表情。
いつからだったっけ。
短大を出て、就職した先で仲良くなったこの人が、気になり始めたのは。
いつからだったっけ。
課長になってしまった彼が遠く感じて、嫌みったらしく「さん」付けや「課長」呼びをしだしたのは。
いつから、私は―――

