「そうやって呼ばれるの、いつぶりかな?」
柿谷課長は苦笑する。
でも今はそんなことどうでもいい。
「なんで、いるんですか?」
「メモ。呼んでないの?」
不思議そうに首を傾げて見せた彼。
探してみると、渡されていた紙束の12枚目に、付箋が貼ってあった。
“昼休み、よかったら残って待ってて。
無理にとは言わないから、選んでいいよ。”
「何ですかコレ。」
「ん?手紙」
「そうじゃ、なくて……」
言いかけて、詰まる。でもここまで来て逃げるのも、いやだった。
「柿谷さん、私たちは、もう終わったんです、よ……?」
「なんで?」
意味がわからない。
そんな風に言う彼が、私には信じられなかった。
「だって、柿谷さん怒ってたし…」
「だって、俺に他に相手がいるとか言い出すし」
「でも、」
「俺は、紗江子が好きなのに」
「え?」

