「いや!違うんです!えっと…」

「違うの?」

「…違くないです」

「どっちだよ、はは。ありがと」


顔が熱い。初夏の暑さが更に後押しする。


「一目惚れ、ね。」

「え?」

「ん、何でもない。てか、門閉まるみたいだけど大丈夫?」

「えっ!?もう!?」


校庭の時計を見ると針は下校時刻を指していた。


「先輩は帰らないんですか?」

「帰るよ。もうちょっとしたら」


門閉まっちゃいますよ?と言おうとしたけど、彼の横顔から涙が見えた。

私は斜め後ろから見ていたから表情は見えなかった。

ありがとうございました、とだけ言って私はその場を離れた。

何も、言えなかった。

何も、聞かなくて良かったんだ。

簡単に話したくないことだったら、嫌だろうし。

…綺麗な涙だった。