「血だらけの手を握ったとき、温かくてさ、蕾は大丈夫だって思った」


でもその後、二人が会うことは無かった。


「…桜葉?」

「…っ、ごめんなさい…っ」


私は泣いていた。


「…蕾のために泣いてくれてるの?」

「悲しいです」


もし、私が先輩の立場なら、今どうなっているんだろう。

何故この人は、こんなに優しい表情が出来るんだろう。

彼は私の頭を撫でた。


「優しいんだね」

「…葵、昨日の続き」


頭を撫でられて、心臓が破裂しそうになったけど、平常を装った。

私の言葉に彼は小さく首をかしげた。