「…っ」
彼は声を押し殺していた。
蕾という人はどれほど彼にとって大きな存在だったか。私にはわかるはずもなかった。
「…桜葉、俺からも1つ願い事聞いて」
「…はい」
「敬語やめて、名前で呼んで」
「…」
涙は出ていないけど、瞳は濡れていた。
何て綺麗なんだろう。何て儚いんだろう。
「…あ、あお…」
好きな人を急に名前で呼ぶのは、照れ臭い。
…二日しか話してないけど。
「…葵」
「よくできました」
そう言って、彼は…葵はその場を立ち去った。
「…何よ…」
何なの…?わからない。彼が何を思ってるのか、全くわからない。
でも何故か、胸の高鳴りは治まらなかった。
彼の、支えになりたい。