2月にいよいよお引っ越しとなりました。
匂う宮は今か今かと待ちわびておいでです。
二条の院の立派な御殿にお車が到着いたしました。

匂宮はお車のところにご自身で歩み寄られて
中の君を抱きかかえおろして差し上げになりました。

これには世間の人々も驚かれ、匂う宮はこのお方に
よほどご熱心だということが知れ渡りました。

薫の君は一方ではそれを喜びながらも内心、
馬鹿なことをしたものだと複雑な気持ちでおられます。


このころ夕霧の右大臣(薫の兄)は匂宮が次期東宮候補なので
自分の六の君を差し上げるご予定です。

そこに早々と中の君をお連れされたので面白くありません。
なんとかせねばと企んでいます。

そうはいっても匂宮は中の君を溺愛されているようですが、
薫の君との仲ですから。気は許せません。
よそよそしい二人を見かけて匂宮は、

「なんと、御簾の外にお座りとは。薫の君は前々からちょっと
怪しいほどお世話をされておられる方ですよ。もっと親しく
御簾の中へ。どうぞどうぞ昔語りでもなさってください」

と言いながらも、

「そうはいってもあんまり気を許されるのもどうかな。
あちらに全く下心がないとも限りませんからね。ふふふふ」

と言われながら参内されて行きました。
今更よそよそしくはできません。
中の君は複雑な気持ちになられます。