「この間こういうことがありましたよ。雛遊びの時に薫様があまりにおもてになり
ますので匂宮様が腹を立てて姫雛をみんな放り投げました。みんな慌てて取り繕い
ましたが、匂宮さまはたいそう焼きもち焼きでらっしゃいます」

「孫とはいえそこはわしと全く似ておらんな」
「横笛も歌合せも和琴も薫様にはとても及びませぬが独楽、竹馬、蹴鞠はめっぽう
匂宮様はお上手でいらっしゃいます。そういうわけでやんちゃな宮様がいつも薫
様を意識して時には大きな焼きもちを焼かれるようです」

「薫のほうがわしに似ている?」
「ほほほ、すぐに姫にもてようとされるのは孫の匂宮様もおじいさま譲り、薫様の
まめで几帳面なところは源氏のお父様譲り。二人合わせて源氏の君?」

『薫がなんでわしに似ようわけはあるまいに』
と老いたる源氏は思いつつ、
「おなごを独り占めにしようとするのは全くわしの病癖じゃ」

「情熱的であられますよ匂宮様は」
「まめでなければ意味がない」
「それはおそらく夕霧様や薫様」
「融通きかぬ堅物じゃ」

老いたる源氏は薫様の話になるとなぜか不機嫌になられます。
そのことを秋好む中宮は子よりも孫かとお思いのようでした。