山荘前のこの大きなうっそうとした空間をそのまま
西山(小倉山)に上れば山荘に入ります。

日の明かりに左(南)に向かうと角倉了以の像がある亀山公園。
この公園には百人一首の歌碑が至る所にあって山頂からは
保津峡が見下ろせます。中腹には周恩来の「雨中嵐山」の碑。

さらに山深くなる小倉山の麓に、この辺りは散策の丘として
川そばでもあり明石のお方や中宮が源氏や匂宮とをあやしてた、

春の花、夏の川遊戯、秋の紅葉とこの寒さの中にも
源氏と匂宮とが香ってくるようです。

山荘前から右(北)は道狭く急な下り坂で御髪(みかみ)神社小倉池
に出ます。周囲数十メートルのこの池には何かありそう。

夜訪れれば池の奥に神社の灯がかすかに見え、たなびく雲は
笹のざわめきに、間違いなくここは物の怪のたまり場のようです。

御髪神社は今でこそ理容美容の聖地になってはいますが
おそらく平安のころの女性の出家とは大いに関係があるはずです。

平安美人の第一の条件は長き黒髪。暗闇で手さぐりで香(こう)の
匂いに包まれて長い髪に触れるところからすべては始まります。

源氏物語では多くの女性が出家しますが、その時バッサリと尼剃り
(おかっぱ)になります。
きれいに切りそろえるのもかなりむつかしかったようですが、
女の命緑の黒髪はいずこへ、化野(あだしの)へ?。

この小倉山の麓はなぜか世をはかなむ野辺の香り匂いが漂っています。
ここは間違いなく物の怪の、それもかなり濃厚な封印の地であることは
間違いありません。