最寄駅に着いたのは22時過ぎ。
僕の家は駅から遠くて、バスも出ていなかったから
今夜は里絵の家にお世話になることになった。
「すみません、急に」
「いいえ。どうせ里絵が急に言い出したんでしょ?
明日は優衣に会いに行くの?」
おばさんも全部知っているみたいだ。
「はい、それで今夜帰って来たんです」
「ご苦労さま。里絵の後で悪いけど、どうぞお風呂入ってね」
「ありがとうございます」
客室に布団を敷いてもらった僕は、久々の畳に懐かしさを感じた。
一人暮らしのアパートはフローリングで、もちろんワンルームだから畳はない。
実家にも畳はあるけど、滅多に部屋に入らないから触る機会がない。
「正岡くん、上がったよ。どうぞ入ってねー」
「うん、ありがと」
「あ、ちょっと待ってて。タオル出すから」
やっぱり、里絵は僕のことを何とも思っていない。
僕はこんなにもシャンプーの香りにドキドキしているのに。
里絵はずるい。
僕よりもずっと上にいるような気がする。


