雨の日カレシ

<父side>



あれは、今から何年前だろうか。


ぱっと計算できないくらい昔。


優衣がこの世に生を受ける前の話。


僕、匠と妻、里絵がまだ大学生だった頃の話。



「教育学部の正岡くんって知ってる?どの試験も満点なんだってー!」


「嘘ぉ!教育学部だったら私と一緒だよ?正岡くんって・・・聞いたことないなぁ」



お昼を食べた後、掲示板を見に行っていたらこんな会話が聞こえた。


本人がここにいるっていうのに・・・。


僕はどんな顔をすれば良いんだろう。



「えっと・・・あった。実習5月だってぇ。・・・あ」


「里絵、どうしたの?」


「実習・・・正岡くんって人が同じみたい」



だから・・・本人のすぐ隣でそういう会話をしないで欲しい。


確かにその『正岡匠』は僕のことだけど。



「はぁ・・・」



思わずため息をついたら、里絵って子に聞こえたみたい。


ちょっと感じ悪かったかな。


気まずさを感じながら相手の顔を見た。


・・・あれ?



「嘘、大竹くん?」



やっぱり、そうだったんだ。