「ね?最後に俺のこと下の名前で呼んでくれない?」
「えっ.....?」
「呼んで、実花......」
「......つ..ばさ...くん」
「くんいらない。」
「....翼」
「実花」
「つ...ばさ」
「実花」
我慢していた涙がこぼれ落ちた。
止まることのない涙。
私は急に暖かい温もりに包まれた。
「実花....泣かないで....」
「ムリ....だよ…」
「笑って。実花の笑顔が好きなんだ、俺。」
私は涙だらけの顔で笑ってみせた。
「そう。実花はいつでも笑ってて。」
「うん!」
「...俺、人生の最期に実花と恋ができて幸せだった。」
「私も!翼と恋ができて幸せだよ!」
「実花....」
「ねぇ私のお願いも聞いてくれる?」
「なに?」
「つばさの顔が見たい。瞳あけていい?」
「..............いいよ。」
瞳をあけた私の前には優しく微笑む彼がいた。
ふたりの視線が重なりあう。
「あ~あ、こんな風に顔見ちゃったら、
余計に離れたくなくなるじゃん.....」
翼は拗ねたように笑った。
それが幼い子供のようで笑ってしまった。
そして、お互い引き付けられるように
瞳をとじて顔を寄せた。
唇が一瞬、熱をもった。


