彼の長い前髪が風で揺れてる。


本当は彼はものすごくかっこいい。


目はスッとしていて、鼻筋もきれい。
前髪を切ったら、誰もが一目置く存在になるだろう。


でも、だからあえて、私は彼に前髪を切ることをすすめない。

彼の魅力を独り占めしたいなんて、我ながらくっそ気持ち悪い。




「ねぇ、咲良。」


突然、工藤くんから声をかけられて、思わずビクッとなったが冷静を取り繕う。


「なに?」


「いや、何考えてるのかなって、人の顔そんなに見て。」


「あ、ごめん。特に何も考えてないけど。」


「咲良って表情読めないよね。」


「それ、工藤くんだけには言われたくない。」



そう言うと、彼はフッと笑った。


あぁ、私この顔好きだな...




いつも別れる十字路に着き、私たちはお互いの家に帰る。




日が暮れた景色の中で、満開の桜が目に入る。




それと同時に自分の誕生日が近いことにも気づくが、きっと彼は知らないだろう。



でも自分から誕生日を言うなんて、いかにも祝ってほしいみたいだし...



でも、私も工藤くんの誕生日なんて知らないしな。



今度聞いてみようかな、そんなことを思いながら、今日も彼との一日が終わる。