工藤くんですら、こんなに近くにいたことがないのに、こんな見ず知らずの男子が自分のすぐそばにいることに、やっぱり耐えられなくて少し泣きそうになっていると。
「咲良?」
私が大好きな人の声がした。
「...工藤...くん...?」
工藤くんは最初驚いていたけれど、何かを察したのか茶髪くんをキッと睨んで、私の手をひいて違う場所に連れてきてくれた。
って、手?私今、工藤くんと手繋いでる!?あー、やばい!ありがとう茶髪くん!君がいなきゃ、こんな奇跡、2度と起こらなかったかも!!ありがとう!!茶髪くん!!!!
そうやって心の中で、さっきまで邪険に感じていた彼に感謝をしていると、急に工藤くんが止まったので私は案の定工藤くんの背中に顔を強打する。
「イタっ」
「どんくさ」
「悪かったですね!!」
元はといえば工藤くんが止まったのが悪い。
「誰だよ、さっきの。」
「知らない人。いきなり話しかけられたの。」
「ふーん」
彼は余程興味もなさそうなので、助けてもらったのは嬉しいが少しだけ心が痛くなった。
