そして30分。



「陣取りゲーム最終戦終了ーっ」と終了の合図が聞こえた。


僕は正直運がよかったのかと思っていた。



だがそれはただの勘違いだった。



僕がいた部屋の前に死体がぞろぞろと並んでいた。



そしてその先に誰か一人が立っている。



「誰…?」



「…」



僕は誰が守っていてくれたのか気になって足の痛みを無視してその人の元へ走った。



「えっ…?


なっ、なんで。なんでお前が…」




「なんででしょうね。


私はあんたに死んでほしくないって思ってしまったみたいだわ」とあちこち撃たれて立ってるのもやっとの状態に変わり果てていた眼鏡女が言った。



「お前たしかどっかに行ったじゃないか。

僕なんか助けてもなんの意味もないじゃないか…なんでなんだよ。」



「助けるのに理由はないわ。


私のこのゲームから生き残りたい気持ちよりあんたを守りたいって気持ちがただ勝っただけよ。」と苦しそうに話をしてきた。


「くそ、お前なんか大嫌いなはずなのになんで涙が出てくるんだよ。」


僕は涙が止まらなかった。


こんなくずでどうしようもないやつを体をはって守ってくれるやつが居るなんて…


眼鏡女のことは大嫌いなはずなのに涙が止まらなかった。



「ふっ、感謝されるようなことはしてないわ。

私はあいつの言いなりになって人を殺すのももう嫌だし、なによりあんたにかけてみたくなったのよ。」



「あっ、あいつ?」


「そうよ。庄田優よ…。


あいつに命令されて私は悪役を引き受けた。

私はあいつの所詮いいなりだったのよ」



「そうだったのか…。」



「あっ、そう言えばまだあんたに名乗ってなかったわね。


私は花園紗香(はなぞの さやか)って言うの。


ここで私とはもう会うこともないけどあんたの記憶の一部に名前が残れば嬉しいな…。




「はは。似合わねえ名前だな。

もうちょっとらしい名前つけてもらえよ。


俺はあんたのことを死なせねえよ。だから諦めるなよ。」



「それは無理ね。私はこのゲームで一番慈悲の心をもっていた。

だから私はこのゲームの集計後どのみち死ぬわ。


最後に守る価値のある人を守れたことを私は自分を誇りに思う。」




「えっ………。」正直言葉が出てこなかった。


なんて救いのないゲームだ。やっとわかり会えたやつともここで別れることになるなんて。



「あー、そうそう。


あんたが前のゲームでやったことは何一つ間違ってないわ。


あんたがそれが正しいと思って刀を抜いたならそれは前に進んだ証拠よ。


だから自信を持って守りたい人のためにその腕を使いなさい。」




「あっ…りが…っ」涙で話すことができない。



「あんたの彼女は幸せね。


前はあんなこと言ったけどほんとは羨ましかったんだ…。


だから私と約束して!

あの子を絶対に死なさないで。男と男の約束よ」と苦しいはずなのに笑顔で言った。