一匹狼な彼氏と能天気な彼女




バンッ



ビクッ


いきなり何かをを叩く音が聞こえたもんだから、考え事をしていた俺の身体は驚きを隠せず跳ねた。



な、なんだ…?



音のした方を見ると、立ち上がっている桜木の姿が……



「先生、あたしがアイツと席入れ替わります。それでいいですよね?」



普段より少し強めの口調で言う桜木。



そしていつの間にか、ためらう教師にさらに迫り許可を得て、反対していたダチもなんとか説得したらしい桜木は席を移動して、俺の方へ来ようとしていた。



「ふぅー…てことで、よろしくー!」



そう言った桜木の顔は、笑顔だった。



しかもその笑顔は、はっきりと俺に向けられている。



「…ん。」



笑顔を向けられたのは何年ぶりだろうか。



長い間、恐怖で歪んだ顔や邪魔者でも見るような目しか向けてこられなかった俺には、初めて笑顔というものを見たかのような感覚になった。