この道を、君と

ロビーのクリーム色のソファに深々と腰かける懐かしい横顔

カツン、と人気のないロビーに砂都美のヒール音が響く

砂都美のつぶやきに顔を上げた彼は、まぎれもなく彼だった

忘れるはずがない

忘れることなん出来ない

「よっ」
目を見張る砂都美ににかっと笑いかけ、片腕を上げる

「…どう、して?」

「ん?近くまで来たからさ、元気かなーと思って」

ついでに渡したいものもあったし

そう言って手元のカバンを漁りながらカツカツと近寄ってくる

無意識に肩にかけたカバンのひもを握りしめたのは、あの懐かしさにとらわれそうになったから

ふわりと香る変わらない香りに顔を上げることなんてできなくて

見つめたのは、彼のお気に入りのブランドのコート

ああ、今でもセンスはいいんだ

と思考の停止した頭で思う