「ほーんと、酔っぱらった勢いだか何だか知らないけど、弱ってることろに付け込めば落とせるかもしれなかった砂都美の背を、元旦那に戻るように押しちゃうんだもん。あんた、相当なお人よしよねー」

くいっと仰ぐのは、今日すでに3杯目を数える生ビール

もちろん俊のおごりだ

「だから、言わないで下さいってば」

そういう峻は自棄のみなのか、すでに5杯は飲んでいる

果たして無事に家までたどり着けるのだろうかと頭の片隅で思ったが、

そこまで面倒を見やる義理はないか、とお人よしではない芽衣は思いなおし、

今に至る

「でーもま、最後に砂都美のあの笑顔が見れて良かったでしょ?」

失恋のつらさなんて吹き飛んでしまうくらい

お釣りがくるくらいにその笑顔は晴れ晴れとしていて美しかったから

「まあ、そう、ですね」

でも、もうあのまっすぐに仕事に向かう瞳に逢えないのかと思うと

少しだけ、そうほんの少しだけ寂しいな、と思うのだ