この道を、君と -おまけ-



春の陽気の訪れとともに鬼チーフと名高かった桐谷砂都美が姿を消した

今までのキャリアを生かし、自宅の近くに個人事務所を構えたのだ

ついでにいう3度目の正直を実現するため

と晴れやかに笑い、彼女は去って行った

今までで最高の笑顔を残して

そんな史上最年少女性チーフの独立とともにもう一つ

桜の花びらのように儚く散ったものがある

「…っとにさ、あんたバカでしょ」

と呆れ顔で頬杖を突くのは、まだまだ受付嬢の椅子から離れられそうにもない

砂都美の親友・芽衣だ

「だから、もう放っておいてくださいよ」

自分でもなんであんなこと言ったのか、ものすごく不思議というか

あの時に戻れたら自分の口をふさぎたいんですから

とその向かいで肩を落とす絶賛失恋中の大林俊