この道を、君と

「チーフっ」

就業時間

バレンタインだからと早々にいなくなった部下たちをよそに、少し遅く会社を後にする

バレンタインの雰囲気を感じたくないから?

そんなんじゃない

ただ、そう、ただ、やらなければならないことがあっただけ

エレベーターのボタンを押して、移り変わるランプを見つめていると背後から聞きなれた声がかかる

振り返ると綺麗めのコートにそでを通しもせずに走り寄ってくる大林俊だった

「まだ居たの?今日バレンタインでしょ?」

「チーフが言わないで下さいよ。てか、チーフを待ってたんです」

「……ドッキリ?」

「はあ!?」

少し真面目な顔で告げてくる彼を見上げ、砂都美は小首をかしげる

とたん胡乱気に眉を寄せる彼に背を向け

「だって、私を待つ理由っていったらそれくらいしか思いつかないもの。バレンタインドッキリ大作戦とか」

いかにも大林君が好きそうな内容よね

そう告げながら開いたドアをくぐる