無言で目を通している間も俊は、にこにこと砂都美の前で待っている

小型犬かしら

なんて思いながらさらさらと企画書に目を通していく

「全体はいいけど、詰めが甘いわ。これじゃ会議を通らない」

もう一度

その言葉と共に書類を彼へと翻す

「うっわ。チーフホント鬼ですよね。これ俺作るのにどれくらいかかったと思います?」

「知らないわ。いいからさっさと仕事する」

スパッと切り捨て、机の上のパソコンを起動する

崩れない、揺らがない

それがここ、企画部を任された最年少女性チーフ桐谷砂都美だ

上からも下からもできる女で通っている

影では鉄の女とも呼ばれている

それでいい

立ち止まることなんて、振り返ることなんて許されないから

それが桐谷砂都美だから