こんなんじゃいけない

柊二と澪を巻き込んではいけない

そう思って3月14日、ハンコを押した離婚届をテーブルの上において、家を出た

覚えているのは、見上げた桜の木についた蕾

それから自分の過去から眼を逸らし続けたこの三年間

凛と伸ばした背筋は、折れないため

崩れたらあの時の感情が、つらさが、この孤独が

一気に溢れてしまうから

悪いのは、すべて自分

だから、もう振り返ったり、立ち止まったりしないと決めた

感傷に浸ることすら許されない

「でも、もういいの。こないだ柊二に、旦那にちゃんとお別れを言ってきたから」

あれで彼が納得したとは到底思っていない

けれど、決めたんだ

前に進むと

「チーフ、前になんて進んでないじゃないですか」

突然の言葉に驚いて彼を見やると