そっとあげた口元は、ちゃんと微笑みになっているだろうか

哀しい瞳になっていないだろうか

「…何言ってんだよ。澪の母親は、砂都美だけだろう」

しばしの沈黙ののち

まるで吐き出すように柊二が眉を寄せる

「ありがとう」

でも、もういいから

幸せになって

「ごちそうさま」

飲み干したカップの中のカモミールティは、いつもより少し苦い気がした

「砂都美…!!」

背後を柊二が呼び止めるけれど、もう振り向きはしない

きっと自分が進まないと彼らも進めないから

自分に付き合う必要はないから

だから、せめて彼らの幸せだけは、願いたい