恋人同士だったころ、よく行ったカフェは、女の店員さんが一人で営む隠れた名店

紅茶が専門らしいけれど、奥のキッチンで作っているお手製のケーキも抜群においしい

誕生日、記念日、お祝いごとのあった日等々

何かと理由をつけては、足を延ばしていた

チリン、と涼しげな鈴の音が来客を告げる

「いらっしゃい」

そのあとに続く店長さんの声もとても澄んでいて心地がいい

音もなくプロペラのまわる店内は、落ち着いた雰囲気に包まれている

日差しの差し込む店内に一組カップルの姿があって、砂都美はふと視線を止める

「あの二人、よく見るんだ」

きっと常連なんだよ

砂都美の視線を追って、柊二が口を開く

店内と同様落ち着いた雰囲気の流れる二人に視線を外せなくなる

砂都美たちと同じで仕事が休みなのだろうか

丸テーブルに向かい合わせで座っている二人