この道を、君と

「ええ。ありがとうって伝えてくれる?」

わかった

そう言い置いて去っていく彼の背中

記憶と少しも変わらない

でも、確実に時は進んでいる

だから、私は振り向かない

彼を解放するために

「……チーフ?」

すごく遠慮がちに背後から声がかかる

ふ、と肩で息をしてから

「じゃ、お疲れ、お二人さん。私明日の会議の試料作らないといけないから」

微笑を浮かべ再びヒールの音を響かせる

「チーフ!!」

呼び止めるように峻の声が聞こえたけれど、その歩みは止めない

だって、きっと今自分はものすごく泣きそうな顔をしているから