そして一見のお客は
慌てた様子で

一見『何するんじゃい!放さんかぃ!!』

と怒鳴ったが
そんな威嚇で
怯むような相手では
無いのは一目瞭然。

一見のお客は
店の外に引きずり
出され、
絞められていた。

その瞬間、
私はその人に
惚れてしまった。

その人は、
江藤さん、28歳。
既婚者。
若頭だった。

江藤さんは、
渇を入れた後に
一見のお客に
こう話していた。

江藤『なぁ?おっさん、どんなけ我がの都合が悪なったからゆうて男が女に刃物向けたらあかんわ。それはおっさんの筋違いやろう?金も無しに歌って、飲んでできる思とったらあかんで。金なかったら飲むな!飲みたかったら、金稼げ!おっさんも、それぐらいのことわかってるはずや。』

一見『すんまへん…。…。すんまへん…。』

江藤『今日のおっさんの分は、わしが払ろとくけぇ、おっさん性根入れて金稼いで、またこの店飲みに来たったらええやんけ。の?』

一見『おおきに。ほんますんまへん…。』

一見のお客は
少し顔が腫れていて
目の上あたりが
殴られた時にか、
切れていて少し出血
していた。

深々と、一見のお客は
江藤さんと、
私達に頭を下げて
帰っていった。