退院したあかりは久しぶりの外の空気に顔を綻ばせていた。
大きく伸びをすると、くるっと俺の方を無邪気に見る。
あかりの手の中には俺が渡した小さな花束。
花屋でこれを買った時は、まじで恥ずかしかった。
隣でりなが笑ってるから余計に。
車に乗り込む時も、花束を離さなかったあかりは相当気に入ったらしい。
それが俺の心をまたあったかくする。
だけど、あかりの顔が凍りついたのは自分の部屋を見てからだった。
そこにあったのは咲夜の部屋にあったはずのあかりの荷物。
俺の方をゆっくりと向き、震える声であかりは尋ねる。
「ゆうや、れんは…?」
入院中。
あかりは咲夜について一切触れてこなかった。
いや、きっと触れられなかったんだ。
この事実を聞きたくなかったから。
だけど、今あかりの部屋にあるあかりの荷物が。
咲夜との別れを意味してることをあかりは理解してるから。


